法的整理におけるM&Aのメリット
目次
M&Aの必要性が高まる
法的整理が開始すると、世間では倒産したと評価され、会社の信用力が低下し、事業価値も低下し易くなります。取引先も債権カットの対象となります。そのため、法的整理に入った場合、会社としては事業価値を低下させないことが必要となり、そのためにM&Aを活用して信用力、資金力を補う必要が高まるのです。
M&Aを利用し易くなる
会社法の手続の一部が不要になる(売り手のメリット)
会社更生手続においては、減増資、事業譲渡、会社分割、合併、株式交換・株式移転などのM&Aの手法を更生計画によって行うことができるようになります。事業譲渡は裁判所の許可のみで行うことができる場合もあります。
民事再生手続では、原則として会社法の手続が必要ですが、手続開始時点で会社が債務超過の場合には、裁判所の許可を得て再生計画によって減資することができますし、株式譲渡制限会社であれば、裁判所の許可を得て再生計画によって第三者割当増資をすることができますし、事業譲渡も再生計画か裁判所の許可で行うことができます。
健全な財務状態の事業を買収できる(買い手のメリット)
法的整理に入った会社は債権のカットなどにより財務状態が健全化しますので、買い手にとっては買収意欲が湧きやすくなります。また、売り手は再生のために早急に信用力、資金力を回復しなければならない状況ですから、取引において買い手の立場が強くなり買収金額が低額になりがちです。つまり魅力的な事業を買いやすくなるのです。
法的整理におけるM&Aの一例:減増資
減増資とは、既存株式を消滅させて第三者割当増資する手法をいいます。つまり、株主を無償で100%減資した上で第三者(スポンサー)に新株の全てを発行します。
これにより、法的整理中の会社はスポンサー会社の100%子会社になり、スポンサーの信用力をバックに再生を図ることになります。
同じ状態を株式譲渡で作り出そうとすると、株主の個別の同意が必要となり煩雑ですし、会社が株式を引き受けるとすると膨大な資金が必要となります。
これに対し、法的整理中の100%減増資ができれば少ない資金で株式を100%取得して会社を完全に買収することができるのです。
また、法的整理中でない場合、100%減資に既存株主全員の同意が必要になりその実現は容易ではありませんが、前記のように法的整理中であれば裁判所の許可を得て再生計画があれば行うことができるのです。