会社分割はどのような手順ですすめればよいのでしょうか。
会社法は、会社分割を行なうための詳細な手続を規定していますが、気をつけるべきポイントは、労働者・株主・債権者の各利害関係人の利益に配慮した規定があるので、それらの規定に違反しないということです。会社分割を進めるにあたっては、常にこの点を意識するようにして下さい。
新設分割の手続
目次
新設分割では、以下の手続が必要となります。
分割計画書の作成
新設分割では、まず、分割会社が分割計画書を作成することになります。
分割計画書には、
(1)新設分割設立会社の組織体制に関する事項、
(2)承継する権利義務に関する事項、
(3)新設分割対価に関する事項、
(4)いわゆる人的分割を行う場合はその旨等、
法律で定められた事項を記載しなければなりません。
事前備置書類の開示
分割会社は、新設合併契約等備置開始日から分割の効力が生じた日の後6ヶ月を経過するまでの間、以下の事前開示事項を記載した書面を本店に備置しなくてはなりません。
この事前開示は、株主に対しては株主総会決議において会社分割に賛成するかどうか、債権者に対しては会社分割に異議を述べるかどうか、の判断材料を提供するために認められている制度です。
そのため、分割会社の株主・債権者は事前開示事項を記載した書面を、営業時間内であればいつでも閲覧し、その謄本・抄本の交付を求めることができるとされています。
事前開示事項
(1)新設分割契約の内容
(2)分割条件等の相当性等に関する事項
(3)他の当事会社の計算書類等の内容
(4)当該当時会社の重要な後発事象等の内容
(5)分割会社・設立会社の債務の履行の見込みに関する事項
株主総会の承認決議
原則として、分割計画書は、発行済株式総数の過半数にあたる株式を有する株主が出席する分割会社の株主総会において、その議決権の3分の2以上の賛成による承認を得なければなりません。
なお、会社分割に反対の株主は、一定の条件を満たすことにより、分割会社に対し、株式の買取請求をすることができます。
債権者保護手続
新設分割においては、分割計画の定めに従い、会社債権者の承諾なしに、分割会社の債務が分割会社と設立会社に割り振られることになるため、その内容によっては、債権者の有する債権の回収可能性に重大な影響を与える可能性があります。
そこで、会社法は、一定範囲の債権者に異議を述べる機会を付与することで、かかる債権者の利益を保護しています。
分割の登記
新設分割では、新会社の設立登記により、新会社が設立して会社分割の効力が生じます。
従って、新設分割では、分割会社について変更の登記、設立会社について設立の登記をすることにより、分割計画書記載のとおりの会社分割が完了することになります。
分割の登記は、
(1)株主総会承認決議の日、
(2)反対株主に株式買取請求権の通知・公告をした日から20日を経過した日、
(3)債権者の異議手続が終了した日、
(4)共同新設分割の場合に当事会社が合意により定めた日、
のうちいずれか遅い日から2週間以内にすることが必要です。
事後備置書類の開示
分割会社及び設立会社は、以下の事項を記載した書面を、分割の日から6ヶ月間本店に備置しなければなりません。
この事後開示は、株主・会社債権者・その他利害関係者に対し、主に、会社分割無効の訴えを提起するかどうかの判断材料を提供するために認められている制度です。
そのため、株主・債権者・その他利害関係者は営業時間内であればいつでも閲覧・謄写することができます。
事後開示事項
(1) 分割の効力を生じた日
(2) 反対株主の株式買取請求、債権者保護手続の経過
(3) 新設分割により承継した重要な権利義務に関する事項
(4) その他新設分割に関する重要な事項